数式を使わずコリオリの力を直観的に理解しようというページ。
次の図のように、
反時計回りに回っているターンテーブルの上のA点にあなたは立っているとする。
あなたはピッチャーで、B点にいるキャッチャーに向かってボールを投げる。
ターンテーブルが回っていなければ1秒後にB点のキャッチャーに届く球速とする。
実際はターンテーブルが回っているので、
1秒後あなたはC点に、キャッチャーはD点まで動く。
ボールは速度ベクトルの合成によりAEの向きと速さで直線的に飛ぶので、
1秒後にE点へ、つまりあなたからキャッチャーを見た方向より右の方に位置することになる。
外から見て斜め直線のA→Eのボールの動きは、
ターンテーブル上のあなたから見れば、
最初投げた瞬間はキャッチャーの方向に向かうが、徐々に右に逸れて曲がっていくように見える。
つまりボールの速度ベクトルと直角方向に力が働いているように見える(コリオリの力)。
この「右に逸れて曲がる」ことがピッチャーとキャッチャーの位置関係に依らないことを見るために、
今度は位置を変えて、
ピッチャーであるあなたは最初B点に、
キャッチャーはA点にいるとする。(下図)
今度は1秒後にあなたはD点へ、キャッチャーはC点へ、ボールはE点へ動く。
したがって今度もあなたから見てキャッチャーの方向より右の方向へ、
ボールは逸れる。
他のどんな方向でもやはり右に逸れる。
さて低気圧は外から空気を吸うが、
コリオリの力により北半球では空気は最初右に逸れる。
しかし低気圧の中心に近いほど強い吸引力を受けるため、
逸れたところから吸引されるようになり、
下図のように反時計回りで吸い込まれる。
これが台風となる。
以下ちょっとだけ式を使う。
初等力学によると
コリオリの力= ー(ターンテーブルの角速度ベクトル) × (ターンテーブル上で測ったボールの速度ベクトル) (1)式
である。(この × はベクトルとベクトルの外積)
ターンテーブルの角速度ベクトルは画面に垂直手前の方向なので、
これを右手の親指に合わせる。
ボールを投げる方向に人差し指を合わせると、
外積は中指の方向となる。
コリオリの力はそれにマイナスを付けよ、と上式は言っているので、
ボールは右へ逸れる実験事実と一致する。
方向はこれで理解できるが、
大きさも次のように大体理解できる。
まず逸れの大きさはターンテーブルの角速度に比例することは直観的に理解できる。
次にボールの速度との関係であるが、
ボールを極めて速く投げればあまり逸れずにキャッチャーに届くだろうし、
遅く投げればターンテーブルがどんどん回転するので逸れは大きくなる。
つまりボールの速度と逸れは反比例する。
これは一見上式と逆に見えるが、
遠心力が角速度の二乗に比例することを考えると、
反比例と一乗が打ち消して一乗が残るので、
ボールの速度とコリオリの力は比例することになる。
比較のため、遠心力の式も出すと
遠心力=(ターンテーブルの角速度の大きさ)の二乗 × (ターンテーブルの中心から見たボールの位置ベクトル) (2)式
である。(この × は数とベクトルの積)
たとえばターンテーブル上で静止(したがって外から見たらターンテーブルと共に回転)しているモノに対しては、
(1)式が0となるのでコリオリの力は働かず、遠心力だけが働くことがわかる。
またターンテーブルの中心からボールを投げると、
投げた瞬間は(2)式が0なので遠心力は働かず、コリオリの力のみが働く。
[最終稿:2005年10月19日]
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