対数の怪・種明かし
y = ( d/dt ) log [ x ( t ) ] (1)
を定義に即して書けば、
y = lim (Δ→ 0){ log [ x ( t+Δ) ] − log [ x ( t ) ] }/Δ
= lim (Δ→ 0){ log [ x ( t+Δ)/x ( t ) ]/Δ}
となって、最終的に log の中が無名数になります。このとき y の意味は、単位時間あたりに x が何倍増えるかを意味します。だから x が次元を持っていても構わないわけです。t は時間である必要はないですね。何でもいいんですが、アンプのボリュームの角度だとすれば、単位角度回したときパワーが何デシベル増えるかなどの意味を持ちます。微分の中の対数の引数は次元を持てるんですね。要は引き算になっていれば次元が消えてしまうわけです。
しからば微分でなくナマで
f = log x (2)
と書かれると、確かに x に次元を持たれては困るのですが、たとえば長さの次元だとすれば、(2)式の両辺からわざとらしくlog ( 1 cm ) を引いてやると、右辺は
log x − log ( 1 cm ) = log ( x/1 cm ) (3)
となって、右辺のlogの中身が無名数になります。log ( 1 km ) を引くのでもいいです。原点が変わるだけです。私たちは対数プロット(片対数でも両対数でも)するとき次元を持つ量を直接プロットする習慣がありますね。そのときcmでプロットしてもkmでプロットしてもグラフがシフトするだけで形は変わりません。これは対数だから言えることで、他のプロットでは必ず ( kx ) や (−γt ) のような形でしか普遍性を保てません。なんとなく不思議な感じがしませんか?
[最終稿:1998年6月6日]